7.25.2014

心の戸隠(観光編) -2014.6.30



こんなに多くの鳥に
囲まれるのは、初めてだなあ
すぐそこにいるのはホトトギス
なにを言っているのかわからないけど
別の小鳥達のおしゃべりは
高い木の枝や
もっと離れた森からも届く
さまざまなさえずりが
遠く近く重なりあって
自然の音響はなんてすばらしい
耳だけで朝露を感じ
よどみない緑が広がる




キャンプ場のテントのなかで
横になったまま、
ぼんやりそんなことを思って、次に
閉じたまぶたへ射す光まぶしく
ハッ、とした
時計を見て「あ〜⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
眠りにつくときから、
そんな予感はしていたけれど。



山は満喫したから、
今日は里を巡ろう








キャンプ場をあとにして鏡池へ
水のなかの戸隠連峰
その姿をそうっと揺らす風
あそこが昨日いた八方睨だね
稜線を辿って、
いつか踏みたい本院岳も
山は眺めるだけでも楽しくて
そのうち眺めるだけでは、
いられなくなってしまう



戸隠神社の中社にお参り
周辺には立派な杉の木や、
歴史ある宿坊が並ぶ
お昼には長野市街へ続く、
バードライン沿いの戸隠そば博物館で
そば打ち体験をするつもり
その前にホンモノを知らなくちゃ
中社の鳥居からすぐの
「うずら家」さんに入る
実はわたしは蕎麦よりもうどんがすき
おいしいと評判のお蕎麦屋さんでも、
うどんがあればそちらを頼んでしまう
でも日本三大そばのひとつ、
戸隠そばを食さないわけにはいかない
風味豊かな霧下そばとは一体⋅⋅⋅⋅⋅⋅



ざるそばを食べて驚く
こんなの初めて!
簡単に「蕎麦」とは言えない
おかしな表現だけれど「クリーミー」
お、お、おいしい⋅⋅⋅⋅⋅⋅
すっごくおいしい!
ステマではありません。笑
蕎麦で感動したのは人生初



蕎麦を運んできたお店の女性に
冬の戸隠のようすを訊いてみた
とても登れやしないけど、
冠雪の岩峰を見上げてみたいから
女性は忙しいのにも関わらず、
観光協会発行のガイドチラシを開き
スノーシューの案内をしてくれた
信濃町ICからも
長野IC側のバードラインからも
ここまで除雪されてますから、と
この旅で
何度か地元の方とお話したのだけど
みなさん優しく親切で、
本当に本当に感激した
自然、ひと、歴史
わずかに垣間見たにすぎないが
戸隠で過ごした二日間のすべてに
文句のつけようがないのだ



うずら家を出て
休む間もなく戸隠そば博物館へ
そば打ち体験で打つ蕎麦は、
四人前らしいけど⋅⋅⋅⋅⋅⋅
食べ切るのだろうか



平日で空いていたため
すぐに案内される
説明を受けながら
粉を混ぜてこねる
なかなかの力しごと
教えてくれた方は女性
地元では当然のように、
そば打ち技術が嫁入り道具のひとつ
こねたそば粉を丸める「ヘソ出し」や
のしたあとに畳むなどの要所は
女性が代わって手際よくこなす
Hiさんとわたしが、
一生懸命にのばした生地は
のし板の上で
あっという間に八つ折りになった
なにか布地を扱うように見えた
その正確さとしなやかさに、
口を開けたまま見惚れてしまった








大きな包丁でトントン
トントン、と音をさせるのが
案外難しいらしく
「良い音してますね、上手ですよ」
褒められて調子にのったら
あら、麺が太くなった



その場で茹でてもらった蕎麦は
お店でいただいたのとは、
また違うおいしさ
四人前、山盛り
目の前にして心配になったけど完食








博物館の裏は高台になっていて
大きなすべり台がある
当然すべる
高台から別の山塊が見える
荒倉山かな?
どこを見ても伝説の残る山
気になるところばかりで困る




そろそろ時間が押してきて
長野ICへ向かう
街へはさほど遠くないのだが
わたし達がさっきまでいた場所は
いったい何だったのだろうと
都会とは言えない長野市街が
とてつもなく俗っぽくて





戸隠
忘れられない
あの風や音や香り
恋しくなる
写真と違うのは
感じるすべが
目だけじゃないってこと



また必ず呼ばれるだろう






7.18.2014

魅惑の屏風 戸隠山〜高妻山(後編)2014.6.29








爽快!
八方睨 1900mのピーク
山を歩いていると、
「心を読まれているんじゃないか」
そう感じることがある
少しでも弱さを見せたら、
谷にのみこまれてしまいそう
神の威、塔渡り
自分を信じて渡り切ったら
明るい空が迎えてくれた








八方睨は破線の難ルートと合流する
たまに雲が切れて、
憧れの西岳、本院岳方面を望む
もっと成長して
また戸隠山へ登頂するとき
わたしは必ずあそこからやって来る




八方睨をあとにして、
すぐに戸隠山頂
ここから高妻山を目指す
戸隠連峰
美しい屏風を伝う縦走




伝説の九頭龍神の仮の姿、
九頭龍山を越え
一不動避難小屋から先は雨
どしゃ降りでない限り、
愛用のクバ笠が役立つ
麦わらをかぶった男性とすれ違い
「その笠いいなあ」
どこでも目印になる
この夏、たくさん、
一緒に旅をしよう
(山で見かけたら
声をかけてくださいね)




一不動、二釈迦、三文殊
四普賢、五地蔵、五地蔵山
六弥勒、七薬師、八観音
順に仏さまの前を通過する。
九勢至、十阿弥陀
高妻山より先に、十一阿しゅく
十二大日、十三虚無蔵
今回は踏まなかった乙妻山へと続く




さて、高妻山が見えてきた
「でっかいな〜」








高妻山を登った人の多くが
「キツい山だった」と
感想を持つことは知っていた
山は山である限り、
どこもしんどい思いをするもので
なにも特別ではないだろう
事前に地形図を見て思っていた
実際に歩いてみたら、
なかなかどうして!
縦走最後にガツンときた
わたしもHiさんも、
存分にいたぶられました。笑
(怖かった塔渡りなど
すっかり過去の出来事に)




ようやく辿り着いた高妻山頂
ゆっくりお茶したいけど
相変わらず天気がグズっている
妙高を眺めたくても真っ白
急ぎ引き返す
五地蔵山まで戻るとき、
展望が開けて大きな虹の橋を見た




下り、新道の森は霧







緑の濃淡をくぐる
きれいだからって上ばかり見ていたら
Hiさんが足元に見つけたギンリョウソウ
雨に合う小さなおばけ




戸隠牧場へおりてきた
脚ごたえのある日帰り旅
群れて走る馬や呑気な牛を見て
愛嬌のあるヤギの頭を撫でて
は〜、帰ってきた。



その夜は言うまでもなく
爆爆爆睡




(戸隠観光編へ続く)




7.16.2014

魅惑の屏風 戸隠山〜高妻山(前編)2014.6.29 戸隠キャンプ場~さかさ川歩道~戸隠神社奥社~八方睨~戸隠山~九頭龍山~五地蔵山~高妻山~(弥勒尾根新道)~戸隠牧場




夏山計画!
楽しみですね。
わたし達も秋頃まで、
大まかな予定が決まっています。
休日の工面が大変なため
日帰り山行が主ですが。
6月末は貴重な連休を利用し
妙高・火打のつもりでしたが
残雪のことを考えると億劫に。
それなら、
日帰り予定候補の戸隠を先にやろう
憧れの山のひとつ
しかし東京方面からは遠い遠い
下山後、急いで帰ってこなくても
キャンプ場にテントを張れば
ゆっくり休めるし、
山行中の荷物も少なくなる。
あわよくば二日とも戸隠へ登ろう
そんな風に考えていましたが⋅⋅⋅⋅⋅⋅




*******




真夜中の上信越道
先週に引き続き、
高速道路はまたしても雨
バチバチ音を立て弾ける大きな粒
なんだか車が可哀想になる
これ本当に止むのかな⋅⋅⋅⋅⋅⋅
なに、駄目ならもう一日ある
二日目のほうがイケる予報




仮眠から目覚めた瞬間に雨あがる
神社の参道まで、
朝の陽射しこぼれる遊歩道
葉っぱ達は思いきりからだを伸ばし
我先にと光を浴びたがっていて
その上に踊る、まるい雫








奥社へ続く杉並木は
写真で見ていたとおり厳か
写真と違うのは
それを感じるすべが、
目だけじゃないってこと




絶壁の一部を見上げる
奥社と九頭龍社に手を合わせ
霊峰へ、いざないの道
信仰の強い場所はとても惹かれる
遥か昔を想像し
今もなお
この山とともに在る
人々の暮らしに思いを重ね








気づくとガスのなかを進んでいる
濡れた岩場を慎重に進む
そろそろ核心








谷底から濛々と巻き上がる霧
姿を消したり現したり
それまでの鎖場など、
子どもの遊びのようだ
本当にこれを渡るの?
と、いうのが
塔渡りを目の前にしたときの感想
立って渡るにはリスクが大きすぎる
踏み外したら墜落死








腰が引けるが進むのみ
渡り切るまであと少しのところで
突如強い恐怖に駆られた
(下りるときに落ちたら、
どうしよう⋅⋅⋅⋅⋅⋅)
「またがってこっちまで来い」
Hiさんに声をかけられ
実に素直に従った
生意気を言う余裕は、
ありませんでした




ああ、怖かった。
怖かったけど、また渡るんだ
懲りないお調子者は
翌日もここを歩く(というか這う)
つもりでいました。




(続く)



7.11.2014

裾野は長し 赤城山 -2014.6.22 黒檜山〜駒ヶ岳




国境の長いトンネルを抜けたら
もしかしたら、
雪国なのかもしれないけれど
どこまでも黒い夜の底
諦めて眠りについた
目覚めても雨










日の出と共に止む予報に期待
スタート時は降っているだろう
ところが群馬入りした途端、
勢いよく打たれるフロントガラス
例え雨があがっても、
前夜がこれではね




お天気で泣かされても
次に晴れたときの喜びは倍
谷川連邦馬蹄形縦走
7月6日に無事決行
その様子はまた⋅⋅⋅⋅⋅⋅
そういえば
年明け予定の安達太良山
三度目の正直で、
晴れてくれたら良いなあ




ここは群馬県最北のまち
せっかく遠くまで来たのだし、
のんびり帰りましょうか




*******




どこへ寄ろうか?
そうは言っても雨
悩みながら一旦高速に乗ったものの
「赤城山まで走ろうか」
とHiさん
正直なんでも良くなっていたわたし
SAで買った舞茸弁当ばかり気になる
「お弁当食べられるところなら、
どこでもいいよ」




高速をおり
麓を走りはじめた途端
どんよりした空の
潰れそうな苦しみをよそに
大きく、大きく爽快な赤城
標高をあげてゆくと
つややかな森が広がる
そのうち見事なツツジ群
霞みのなかの赤い色気




今度は舞茸弁当のことを忘れて、
窓のそとに夢中になった
車を停めて、観光地を散策
いつのまにか止んだ雨








大沼(おの)
鏡のようなカルデラ湖のほとり
弁当を広げ空っぽになるころ
「黒檜山まで歩いてみよう」
ええ?本気ですかHiさん。
短い登山道とはいえ、
心の準備というものが⋅⋅⋅⋅⋅⋅
でもそんな予感もしてた
OK、だったら外輪山縦走
駒ヶ岳まで行っておりてこよう




展望はない
特に谷川連邦方面は
スモークの調整に失敗した、
昔の歌番組を見ているかのようだ
スターの姿は煙のなか









少しでも山道を歩いて、
Hiさんの欲求は多少解消されたかな
雪のあるときにも来よう、今度は
違う「白」を




広大な赤城山
近くへ行くとわかる
花だけでなく木々も可憐
山や空や植物は、いつも
一言も発しないけれど
その表現力たるや



良いところ
一日かけてくまなく歩いてみたい




それとね、
赤城牛を食べたいです


7.04.2014

トリオ・デ・日光白根山 -2014.6.15 湯元~前白根山~五色沼避難小屋~奥白根山~五色沼~五色山~国境平~湯元



梅雨の晴れ間
山友達nobuさんを交え日光へ
nobuさんとは、
昨年9月の赤岳以来の山行です。
あの日もよく晴れていた
彼は爽やか晴れ男



白根山は昨年初冬に訪れ
避難小屋の手前で引き返したため、
その日のリベンジです。
霧氷で飾られた、
美しい木立を見渡す前白根
一方、暗い雲に覆われた奥白根
先行していた地元男性と話す
「山頂は吹雪いているかもな」
前白根で引き返すという
わたし達も、
避難小屋までの雪道を確かめたのち
湯元へ戻りました。
「ここはいつも周りと天気が違う。
新潟の山と同じことが多いよ」
白根山をよく知る男性は
そう教えてくれました。




*******




未明の出発
三人は賑やか
行きの車のなかで、
すでに喋り疲れてしまった。
山道を歩き始めると、
おしゃべりもそこそこに
最初の急登に夢中になる
外山から先は雪がちらほら









また踏めてうれしいな
久しぶりの雪のうえは
わくわくする、大人だって




前白根で休んでいた登山者と
山ばなしがはじまる
「ここはいつ来ても、
風が強いねえ。通り道だから」









「富士山が見えていますね」
男性が指さすずっと奥に
ホントだ、見慣れた頭
気づかずごめんなさい
北西の山々に気を取られていたから










このルートは
景色や登山道が様々に変化する
白根山は、
自らも姿を変えながら
抱える自慢の庭を
次々披露してくれる
だからとっても楽しい周遊
そんなに惜しげもなく
見せちゃって、いいの









山頂に着くと
別ルートからの登山者でいっぱい
子どもたちもいる
富士山渋滞を思わせるにぎわい




登山者が多いぶん
わたしが被るクバ笠にも
度々声がかかる
笠をお供にする山行では
たいがい数名に話しかけられるものですが
この日は団体さんに囲まれ、
バシバシ写真を撮られました。
なんという笠なのか
どこで買ったのか
いくらしたのか⋅⋅⋅⋅⋅⋅
質問攻めでも、
悪い気はしないもの。
沖縄出身でないどころか
行ったことすらないのに、
クバ笠の説明とおすすめを









ぐるっとまわりこんで、
五色山で眺めを楽しんでいると
奥白根の登りですれ違ったご夫婦と再会
わたし達とは逆周りだったみたい
また会えた!と奥様
「ねえねえ、
もう一度訊いてもいいかしら」
クバ笠、を憶えられないらしい
「メモするわね。
お父さん、紙!」
ご主人のメモ帳に書き込んで
「どこかで会っても、
すぐにわかるわね」
と、にっこり
またね!と手を振って別れた
仲良さそうなおふたり
名古屋にお住まいとのこと
またお会いする日がきたら
わたしと同じ笠をかぶった奥様と
笑顔が優しいご主人と
一緒に記念撮影しよう




下山して温泉で汗を流し
自宅まで長い道のり
でも三人は賑やか
帰りの車中でも
おなかが痛くなるくらい笑った
良い山
良い仲間
良い出会い
これ以上望むものはないなあ



「ありがとう」
心から思える山行でした。