8.21.2014

みちは続く 白馬〜五竜 1 -2014.7.27~29 初日: 猿倉~白馬岳頂上宿舎




テントを抜け出して、山頂へ
今日が終わる
我々のほかに誰もいない
雲の上のそういう場所は
地球からみんな、
いなくなってしまったみたいで








サヨナラは
一瞬、強い光を放って
手が届かぬまま落ちていった
姿が見えなくなっても
空と雲のいろ、
すべての影を次々変えながら
いつしか仄暗く
暮れるすばらしさは儚さにある
もう二度と会えない



昨年9月末
白馬三山を巡ったときのこと。
今年は続きを歩きましょう、
そんな計画から始まった今回の山行




ひと昔まえ
白馬山荘で働いていたHiさん
この界隈には
特別な想いがあるようで。
過去を語らない彼ですが
たまに思い出して、
当時の話を聞かせてくれます。
自分史の分岐点は
誰にでもあるもの。
どのようなカタチであれ
そのきっかけが山であるのは、
山が好きで山へ通っている人
みなさんそうなんじゃないかなって
勝手に想像するのですが⋅⋅⋅⋅⋅⋅




*******




約一年ぶりの白馬
一日目は雨予報
二日目から持ち直す
猿倉まで乗ったタクシーで
運転手さんと天気の話をする。
「とにかく早く小屋へ着くことだよ。
いつだったか、
夫婦が稜線で雷にうたれて
旦那さん亡くなったんだけど、
夕方4時ごろだったよ。
なんでこんな天気で、
こんな時間に行動するんだって、
救助の人が言ってたよ」
そうだなあ⋅⋅⋅⋅⋅⋅
天狗山荘までは無理だろう
上は風も強い予報



猿倉荘で届を出して出発
白馬尻に着く前に降り出した
合羽を着込み、
続いて休憩した小屋の軒下で
ゲイターとミトンを着ける
結局、このミトンのおかげで
手を冷やすことはなかった








真っ白な大雪渓
落石が怖い
とにかく速やかに通過しよう
シュー!と音がしたが、
見えないのだ
どこで岩が滑り落ちているのか



激しく身体を打つ雨
しかしこのときのわたしは
全く心が折れなかった
わかっていたことだ
高山の大雨で全身を濡らし、
手がかじかみ
自分で合羽を着られないほど
弱ったことがある
本当に浅はかだったと思う
友にも心配をかけた
今日は頂上宿舎までは乗り切れる
10時、休まず歩いて宿舎に着いた



「山へ来たのに川みたいだ」
どこかのパーティのボヤき
下山の頃合いをはかる人
これから白馬山荘を目指す人
ごった返す休憩所
うどんをすすりながら考える
明日、岩が渇いていると良いな⋅⋅⋅⋅⋅⋅
宿泊手続きをして
「針ノ木」という部屋で
過ごすことになった
午後、雨は弱くなったが
風は依然として強く
ヒューヒューガタガタ



薄っぺらいが、
寝心地は悪くない布団である
ちょいと転がったら、眠っていた




(続く)

8.05.2014

巡る、谷川連峰馬蹄形縦走 -2014.7.6 土合橋~白毛門~朝日岳~清水峠~七ツ小屋 山~蓬峠~武能岳~茂倉岳~一ノ倉岳~谷川岳~(西黒尾根)~土合橋



あれよあれよというまに8月
夏山まっさかりですね。
このブログの更新お知らせ用として
作ってもらったTwitterアカウントで
毎日のように
どなたかがどこかの山へ、
出かけるようす
眺めるのが楽しみで⋅⋅⋅⋅⋅⋅
ついここの更新も遅れがちです。笑
行ったことのある山も、
わたしが訪れたときとは違う表情
そして違う感じかた
未踏の山やルートは、
はやく歩いてみたいという憧れ
高い山、低い山
草原、藪漕ぎ、岩稜帯
様々な空、可憐な植物たち
山好きによって造られるタイムライン
雑談を交わしながら
山に魅せられている方々って、
本当に多いのだなあ
改めて思ったりして



みなさまにとって
思い出深い夏になりますように



いまだひと月遅れの記事ですが
雨で一度流れた馬蹄形縦走
目標としていた周回ルートは
やはり大きくて、
景色も足ごたえも抜群でした。
脚力を維持するため
日の長い時期こそ
長い距離を歩いておきたい



*******



谷川岳の山開き
太鼓を打ち鳴らす音が聞こえる
ヘッデンを灯し
雨上がりの道をどんどん進む
わたしはいつも登りはじめでオーバーペース気味になるため
まずはHiさんに先行してもらう
大きなピークを越えるごとに
ペースメーカーを代わる作戦だ



白毛門に手が届くころ
さあ、あけた







生きた雲を見にきた
空はどこから眺めても、
勝手な物語を想像し
勝手に耽ってしまうものだけれど
谷川界隈はとりわけ劇的
否応なしに引きこまれ
知らぬ間に心を委ねてしまう
神秘








珍しくiPhoneの電波が入る
いま目の前に広がる、
雲海の写真をツイートした
あの日お言葉をかけてくださった、
みなさんどうもありがとう。
一方現地では
「ケータイばかりいじってる」
そうだなあ⋅⋅⋅⋅⋅⋅ちょっと反省




谷を挟み
雲の上に耳ふたつ谷川岳
無事に辿り着くだろうか
延々と続く稜線を確かめながら
若干心配にもなる
しかし些細な不安はすぐに消える
ひとりじゃない、楽しもう







湿原、池塘に和みながら
朝日岳1945m
ここから清水峠まで
標高を約500m落とす
次に1900mを超えるのは、
周回終盤の茂倉岳
それまではピークや峠を
いくつも越えるのだが
確かに脚を運んでいるはずが
翔ける感覚を味わう
踏みしめてきた道は緑の飛行路
「ハイ」が訪れる瞬間



進むたび
少しずつ変わりゆく
折り重なる山々の表情
歩いて創る自分だけの絵巻物
ああ巡るしあわせ








昼前からだいぶガスが出てきた
一ノ倉岳から谷川岳まで真っ白
あと少しが見えない
いよいよ疲れが景色に比例するとき
あと少し



あと少し
いつのまにか登山者の姿が増え
オキノ耳
みな笑顔で嬉しそう
わたしも嬉しい
トマノ耳
うん、やっぱり嬉しい



肩の小屋でご褒美
ビールが飲みたかったけど、
まだ終わっちゃいない
冷たいオレンジジュースを
Hiさんは炭酸
ひと息入れたら西黒尾根をくだる
我慢してくだる
もう急ぐ必要はないから



遠かったけど瞬く間だった
そんな道ほど
すぐに辿りたくなるのは何故だろう
おりてきたときは
「しばらくはいいや」
なんて思ったけれど
次の日になって
「またやりたい」
そんなことをHiさんと



今度はゆっくり
馬蹄形をまわったあと、
主脈も繋げたいよね
より長く
より遠くへ
谷川の空をめぐる旅
いつかできますように