10.03.2014

まだまだ、甲斐駒ケ岳 -2014.8.3 日向八丁尾根~黒戸尾根周回




わたしは、しつこい
そのしつこさは異常
とにかくしつこい



Hiさんは困っていた
昨秋、彼は単独で黒戸尾根から
甲斐駒ケ岳へ登り
日向八丁尾根を歩いた
それを「ずるい」と言われ続け
「今年はわたしも行くんだから」
と言って、聞かない駄々っ子
「いいけどキツいぞ」
「逆回りにすれば良いよ。
黒戸のくだりは、
ほとんど登り返し無いし」



最悪、樹林帯で暗くなっても
よく知っている道のほうが良い
なにも日帰りしなくても
しかし休日が限られている我々は
泊りの山行計画は、
どうしても日数を要する時に使う



知っている
無理でないと見越せば
彼は駄目だとは言わない
そのかわり
いかなる時も絶対大丈夫は無い
「しんどくなったら、
早めに言ってくれよ」
エスケープ出来ない、水場がない
長丁場の日向八丁尾根は
それなりの覚悟が必要だ
もっとも
トレランの方々などは、
颯爽と駆け抜けていくみたいだけれど⋅⋅⋅⋅⋅⋅



尾白川渓谷を挟み
黒戸尾根の向こう側
いくつかの山を越え
鋸岳から甲斐駒ケ岳へ続く稜線に至る
今年の夏の目標のひとつ
わくわくが止まらない




*******




暗いうちに尾白川渓谷駐車場を出る
わたしは、この日向山への登りが
一番キツかった
全身をねちっこく舐める空気
噴き出す汗も手伝って、
暗い森に蒸されていく
このままでは進めない
仕方なくストックを取り出し
やっとの思いで日向山へ








ここで日の出を迎えた
日向山は1600mくらいだが
山頂のようすや、
そこからの眺めは一級品
「元気でた!」








白砂を一気に滑って
あの緑へ飛び込んで



森のなかは
想像以上に美しく静か
見上げた熊棚すら愉快だ
いつしか大岩山に差し掛かり
鎖やロープで急登を下る
この尾根全般に言えることだが
時間をかけて整備してくださった、
七丈小屋のご主人に感謝
なにもなかったら
自分達でロープを取り出さないと
とうてい下れない
刈りこみがなければ
とんでもないハイマツ漕ぎになる
とは言え
登山者で賑わうような
一般道とはやはり違う
危険な登降や
道迷いの可能性もありますので
初めて歩かれる方は十分ご注意を








目の前の甲斐駒ケ岳は
不穏な表情
鋸尾根に合流すると
パラパラ雨
どこを見ても真っ白
足もとの可憐な花たちが
色のない登山道で励みになる
岩を乗り越えながら山頂へ



「なにも見えないね。笑」
そういうこともありましょう
わたしは納得していた
美しい尾根を歩いてきたんだもの
自分の足で見たかった森を



祠に手を合わせる
並んでぶら下がるわらじが
いつ見てもかわいらしい
わたしはなぜ
あなたに執着してしまうのか
わからないけど、また来ます





「ひとやすみ」
photo by Yumiko




黒戸尾根の長いくだりを終え
尾白川にかかる橋を渡る 
身体が訴える疲労は
山を歩いてきた実感
好きな山へ登るための
好きな道がまた増えたんだ
嬉しくてたまらない
でもわたしよりも
無事に山行を終えたことで、
心から「良かった」と思ったのは
ずるいずるいと言われ続けた
Hiさんのほうだろう



思い出を積みこんで車を走らす
夕暮れを迎える夏の白州町
青く豊かな穂波が広がる
満ちた気持ちで麓の町を眺めるとき
これもまた山を登った実感



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