夜
風は止まず
カタカタ小刻みに鳴る小屋の窓
時折強くビョーッと唸る
闇すら、さらわれてしまいそう
ぬくい床の中だが少し心細い
明日の晴れ予報が味方
心配なのは
珍しく頭が痛いと訴えたHiさん
彼はよく眠れているのだろうか
⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅
夕べ「小屋は楽で良いなあ」と
話していた同室の男性ふたり
彼らもテントを広げずに、
ここで眠ることを選んだようで
カーテンの向こう側
まだ静かな寝息
荷物をまとめ、そっと部屋を出る
「お世話になりました」
つぶやいて宿舎の外へ
雨はない
風もすっかりおとなしく
闇に浮かぶ低い雲
昨年、仲間と歩いた稜線を辿る
同じ道にまた脚をそわせて
今日はもう少し先へ
大して成長はしていないが
たった一年でも
たくさんの眺めや思いを共にしてきた
気心の知れた友はもう
わたし以上にわたしを知っているかもしれない
まだ始まったばかりなのに、
そんなことを考えながら
そうして朝
待ってた
おはよう
おひさまは嬉しい
嬉しいからどんどん歩き、登る
楽しみにしていた不帰嶮
なかなかカッコいい岩具合
一峰、二峰と夢中になって、
気づいたら唐松岳
ここまで幾度となく会話を交わした、
登山者3名のうち
黄色いヘルメットの男性
小柄で足の速い女性とは
山頂で笑顔のお別れ
もう一人、物静かな男性は
我々と同じく五竜山荘まで
引き続き慎重に進む
いつものように
たまに前後を交代しながら進み
たまに思ったことを話して
多くは山に集中する
目的があると、
時間はあっという間に過ぎるもの
五竜山荘で荷をおろし
テントで横になると、
つい眠りこけそうになる
山のうたた寝は、とっておきだな
でも目を瞑ると美しいものは見えないし
ここではゆっくり感じる時間だって、
実際はいつもと同じように過ぎていくのだから
ちょっともったいないなって
そんな些細な心の葛藤ですら
贅沢なことだ
(続く)






